4次元ガーデン

16 枯れないガーデン

31.October,2006

一見なんてことのない庭のようだ。 しかしこの写真は十月の寒くなってきた日に撮った。
それなのに向日葵はピンピンしているし、チューリップも赤・青・黄咲き乱れている。
別に温室で育てているわけでもない。
でも花たちは咲き頃が違うのにどの花も満開である。

実は全ての花が造花なんです。
そうやってみると確かに色は嘘っぽいし、ふんふん、なるほどこれは造花だなと分かるのだが、
はじめは分からなかった。
なぜなら花だけが偽物だからです。植木鉢も本物。土も本物。
そして緑色した葉っぱの部分も本物なんです。

コレにはやられた。東京の庭の最先端はもうここまで来ている。
造花が遠くからみたら本物と見分けがつけられなくなるほど精密なこと。
これは一度造花屋さんも覗いてみる必要がありそうだ。

偽物と本物のバランスがいい。
そのために変に嘘っぽい庭にもならず、しかもただ伸びっぱなしの庭ではなくちょっといつも触って整えている庭といった趣きを呈してる。

見た目は普通の庭。しかし実際は造花を使っている偽りの自然。
なんだか訳がわかりません。偽物使うんだったらもっと豪華な庭にすればよいのにとも思う。
でもそうじゃないんだよなぁというのもわかる。ここにこの庭の不思議な力がある。
自然物と人工物が仲がいいというのとはまたちょっと違うのだが、相容れないことはないんではないかという提案のようにも見えるし、それを全く感じずにこの庭師はどちらも区別せずに自分なりの庭を作っている可能性だってある。

「庭というのは植物だけで作られたものではないのかもしれない」

そうやって考えると、京都の龍安寺だって材料は砂と石だけである。
銀閣寺の庭だって砂がただ盛ってあるだけだ。
枯山水という、つまり植物を使わないで自然を表すという技法が古くから用いられていたわけである。この庭も現代の枯山水といえなくもない。まぁプラスティック枯山水だが。
プラスティックで作っているわけです。
ということは、

「植物をたくさん育てると環境にもいいから特に力を入れている」

そんな理由ではないはずなんです。「自然を大切に」じゃないんです。
やっぱり、

「何か飾りたい!」

そのはずです。そしてその欲望のまま思いの丈をぶつけにぶつけて家全体を造花のジャングルのようにしたら気持ちよいのではないかと一度考えてはみる。
しかしそれでは変人扱いです。誰でも変人扱いされると嫌です。
あまり気持ちよい人はいないでしょう。
でも飾りたい。桃源郷を作りたい。
しかも家の中ではなくて、できるだけ人目に触れるよう作りたい。
多少道路に出てもかまいやしない。
それが金属製のゴツゴツしたものだったら苦情でも来そうだが、こっちは「植物」です。
苦情どころか毎日みんなが笑顔でこの横を通り過ぎるはず。
しかしそれでもあまりノボセ過ぎてもいけません。
普通を装って、くれぐれも変人などとは思われないようによく見かけるようなどこにでもあるような庭を作るんです。
そろーっとね。
でも気づいてしまいました。

0円ハウス -Kyohei Sakaguchi-